Starship(スターシップ)が打ち上げられる「Boca Chica」ってどこ?

2023年4月21日

starship-1
出典:Wikimedia Commons

SpaceX社の次期主力宇宙船、Starshipの初回試験飛行が2023年4月20日に行われました(※記事最後に詳細)。打ち上げられた場所は、アメリカ合衆国テキサス州Boca Chicaです。私はテキサス州の位置さえ分からなかったので、どこにあるのかを地図アプリ「日本周遊マップ」で調べてみました。

1.Boca Chicaのある場所

starship-2

アメリカ合衆国テキサス州は、南部のメキシコ国境にあります。東側はメキシコ湾に面しています。

starship-3

南部を拡大してみると、宇宙に所縁のあるヒューストンの名称が出てきました。しかし、ロケット射場は赤道に近いほど有利なので、できるだけ南側が有利です。メキシコ国境付近を拡大してみます。

starship-4

メキシコ国境付近を拡大すると、海跡湖砂州による海岸が目に付きます。

starship-5

ポートイザベルという町があります。その南部にある川が国境になっています。周辺をさらに拡大してみます。

starship-6

ポートイザベルの町の南側は、広大な湿地帯で構成されています。

starship-7

Boca Chicaの名称が出てきました。公園として整備されているようです。

starship-8

付近は、公園ビーチで構成される観光地のようです。他に、何か施設らしきものがあります。

starship-9

スペースX社の南テキサス射場が出てきました。スペースX社のロケットは他の場所でも打ち上げられていますが、Starshipの試験は主にBoca Chicaで行われています。

starship-10

拡大すると、射点が2つあることが分かります。ロケット打ち上げ施設としては、それほど大きいわけではないですね。

Leafletの地図画面も用意しました。

2.Starshipの概要

出典:YouTube

Starshipは、一段目ロケット「スーパーヘビー」の上に2段目として取り付けられます。Starshipは再利用型宇宙船で、大気圏に入るとスペースシャトルのように滑空して降りてきますが、スペースシャトルと違って羽根は小さなものに過ぎず、最後は打ち上げ時と同じ姿勢でエンジンを逆噴射して着陸します。

また、一段目ロケットのスーパーヘビーには、ラプターエンジン33基も搭載されています。これだけのエンジンを正常に動作させるのは難しそうですが、何基か止まっても飛行ができるように設計されているそうです。それでも、1基でも爆発することになれば、たいへんなことになりそうです。

Starshipは、今までにはない革新的なロケットです。運用が軌道に乗れば、他のロケットの存在意義が問われることになりそうです。今後の推移を見守りましょう。

3.Starshipの打ち上げ履歴

Starshipの打ち上げ履歴を載せていきます。

初回打ち上げ

出典:YouTube

Starshipの最初の打ち上げが2023年4月20日に行われました。しかし、打ち上げ後からトラブルが見受けられ、スーパーヘビーStarshipの切り離しも行われずに姿勢を崩し、最後は爆破指令が出たようです。

スーパーヘビー33基あるラプターエンジンですが、やはり点火しないエンジンが2~3基見受けられ、途中の燃焼も異常が出ていました。そのせいでしょうか、燃焼中に2~3基のエンジンが止まったようです。

しかし、ロケットは上昇を続け、スーパーヘビーStarshipの切り離しが行われるはずでしたが、姿勢が安定しなかったためかStarshipのエンジンに点火は行われず、ロケットは回転を始めました。そして、雲の中に入って良く分からなくなった後、大爆発を起こしました。

このような結果でしたが、最初から失敗を念頭にしていたためか、爆発しても歓声が上がっていました。さらに、実験は成功だったとイーロン・マスクは言っています。必要なデータがたくさん取れたため、十分成功の部類にあると判断したようです。

次の打ち上げは、数か月後だそうです。これだけ大きなロケットなので、発射台を含め、付近の被害も少なくなかったようです。

第2回目打ち上げ

第2回目打ち上げは、2023年11月17日が最初のターゲットになるようです。今回の打ち上げで、スターシップは、1段目のスーパーヘビーと繋がったままの状態で点火が行われるそうです。

⇒日本時間2023年11月18日22時過ぎに打ち上げられました。今回は打ち上げがスムーズで、スーパーヘビーの33基のエンジンも全て点火しているように見えました。

そして、2分40秒過ぎにスーパーヘビーとスターシップは切り離されましたが、スーパーヘビーは姿勢を崩して回転し、その後大爆発しました。しかしながらスターシップは、順調な飛行を続けました。

しばらくすると、スターシップからの信号が途絶えました。現時点では良く分かりませんが、異常事態が発生して、爆破措置になったようです。

今回は、前回よりも格段に進歩したように見えました。次は成功するのでは、という期待が持てる打ち上げだったと思います。しかしながら、スーパーヘビーだけでラプターエンジンが33基使われているわけで、単純に計算できませんが、今年度打ち上げ予定のH3なら16回も打ち上げが出来てしまいます。さすがに失敗が長引けば、窮地になる可能性もあるのではと思います。

第3回目打ち上げ

2024年3月14日午後10時過ぎ、第3回目打ち上げが行われました。

今回も、スーパーヘビーとスターシップとの切り離しまでは順調に推移しました。そして切り離し後も、スーパーヘビー、スターシップそれぞれが順調に飛行し、スターシップは宇宙空間にまで到達しました。

その後、スーパーヘビーは地上に戻ろうとしましたが、再点火がうまくいかなかったようで、海面へ速度を落とさず激突したみたいです。

また、スターシップも、次第に姿勢が不安定になり、大気圏再突入では姿勢が乱れた状態で突入し、燃え尽きてしまったようです。この辺は正式な発表がないので、それを待ちたいと思います。

それでも、今回は順調にテストできたのではないでしょうか。Space X社の堅実なテストの進捗には、驚くべきことですね。

第4回目打ち上げ

2024年6月6日22時頃、第4回目打ち上げが行われました。

スーパーヘビーは、1基停止してしまいましたが飛行には影響がなく、スターシップを切り離した後、無事に海面へ着陸できたようです。

また、スターシップは、映像こそ途中切れたものの順調に飛行をして大気圏に突入しました。その際、フラップなどが損傷する映像がありましたが、無事に海面へ逆噴射後に着陸したようです。画面では逆噴射のデータが表示されませんでしたが、実際はできたようで、海面への軟着陸はできたようです。

これで、かなり進歩したのではと思います。今後は、スーパーヘビーとスターシップの陸地及びはしけへの着陸ができるようにすることですね。

第5回目打ち上げ

2024年10月13日に第5回目の打ち上げが行われました。

今回は、スーパーヘビーを着陸台にあるアームでキャッチすることに成功しました。これにより、スーパーヘビーの再利用が可能となりました。まさか、1回のチャレンジで成功するとは、技術力の高さに驚かされます。

次は、スターシップの着陸が行われるようです。いよいよ、実用化が見えてきました。

第6回目打ち上げ

何と、2024年11月18日に、第6回目の打ち上げが行われるとのことです。すごい開発スピードです。日本の民間ロケット企業は、とにかくスピードアップしないととても対抗できないですよ。遅すぎます!!

第6回目では、スターシップもアームでキャッチするようです。従来は垂直で足を出して着陸する予定だったはっずですが、路線を変更するのでしょうか。打ち上げが楽しみです。まだ、スターシップのアームのキャッチは行わないとのことです。その準備段階を埋めるテストを行います。

⇒日本時間で20日午前の予定です。
⇒11月20日の朝7時頃に打ち上げられました。スーパーヘビーは今回、海への着水になりました。スターシップも予定通りインド洋の予定地点に着水しました。スーパーヘビーの海への着水は、予定通りなのか良く分かりません。(アームのキャッチは、条件が満たされなかったようです)


見ていると、スーパーヘビーとの切り離しが高度100kmに届かない(高度70kmほどで)時点で行われていました。例えばH3-4号機の打ち上げでは一段目の切り離しが高度200kmで行われており、随分低い位置での切り離しです。これが再利用型では当たり前のことなのか、今後見ていきたいと思います。