大樹町多目的航空公園 ~ 北海道の宇宙基地として発展中!
地図は「さっぽろ周辺マップ 広尾」より
「宇宙のまち」として昔から大樹町は宇宙開発事業の誘致を積極的に行っています。そして最近は、インターステラテクノロジズ社のMOMOロケット打ち上げが大樹町多目的航空公園付近で行われるようになり、活気づいてきました。
このような宇宙事業が行われる拠点に「大樹町多目的航空公園」があり、滑走路やJAXAの関連施設、大樹町の公共施設などが整備されています。それでは紹介しましょう。
1.大樹町多目的航空公園
出典:大樹町 公式
大樹町多目的航空公園は、当縁川河口右岸に広がる低湿地帯に作られた航空公園です。1995年から運用されており、JAXAの成層圏プラットフォーム(高高度を飛ぶ飛行船)の実験などが行われてきました。その飛行船を格納する大きな格納庫もあります。
しかし、宇宙往復機の発着など、大きな期待が託された大樹町多目的航空公園でしたが、使われる日は多くなく、軌道に乗った実験はあまりなかったと記憶しています。
しかし、インターステラテクノロジズ社が大樹町に設立されて民間のロケット事業を始めたことにより、まち全体でロケット事業を盛り上げる機運が高まりました。そのため、大樹町多目的航空公園も整備が進み、ロケット打ち上げ時には閲覧会場として多くの見物客が集まるようになりました。
今後は人工衛星打ち上げも視野に入っており、大きな変貌を遂げるかもしれません。
2.大樹町宇宙交流センター SORA
出典:大樹町 公式
ロケットの打ち上げがなくても、大樹町多目的航空公園の一角にある「大樹町宇宙交流センター SORA」に立ち寄れば、大樹町の宇宙開発の概要が分かります。
施設内には、ロケットの模型がたくさんあり、実験の体験もできるようになっています。特に、MOMOロケットの実物大模型があり、迫力があります。
冬の間は休館ですが、入場料は無料ですので、ぜひ行ってみましょう。詳しくは画像の出典先を参照してください。
3.インターステラテクノロジズ社のロケット打ち上げ
インターステラテクノロジズ株式会社は、2003年に設立された、民間のロケット打ち上げ事業者です。創業者の中には、ホリエモンこと堀江貴文さんがいて、そのことから「ホリエモンロケット」と呼ばれることもあります。
当初は小型の実験ロケットを打ち上げていましたが、MOMOロケットから採算化を見据えたロケット打ち上げをしています。
MOMO1号機:2017年7月30日
打ち上げ後、66秒で信号が途絶。高度約20kmまで到達した模様。
MOMO2号機:2018年6月30日
打ち上げ直後、エンジン横から出火して落下炎上。落下して壊れた部品にワンボードパソコンの「ラズベリーパイ」があったのですが、通常の製品とどう異なるのかに興味があります。通常の製品はSDカードを使うので、ロケットにはそのまま使えません。
MOMO3号機:2019年5月4日
高度約113kmに到達し、ついに宇宙空間(高度100km)へ到達。
MOMO4号機:2019年7月27日
打ち上げ64秒後に異常を検出しエンジン停止。到達高度は約13km。
失敗の原因は、地上との通信が断絶してしまったことと結論付けられました。ロケット本体には無線受信機が搭載されていますが、何等かの理由で故障してしまったと考えられるそうです。
受信機の故障の理由として考えられることは、上空の雲を通過する際の静電気や、ロケットの振動による配線の断裂などと推測しています。5号機は、これらの問題を解決して成功してほしいですね。
MOMO5号機
2019年12月29日6時45分を第一目標に打ち上げが行われる予定です。打ち上げのチャンスは、1月3日まであります。
2019/12/29:窒素ガス漏れにより中止
2020/1/1:電子機器にトラブルがあり中止
2020/1/2:原因を特定できないため、年始の打ち上げを中止:打ち上げにこれだけトラブルが起こるので、まだまだ技術が確立していないのでしょう。
2020/5/2:打ち上げ予定だったが、新型コロナウイルスの影響を考慮して延期。
2020/6/14:打ち上げ。飛行30秒過ぎにエンジン部から火花。60秒過ぎてからは姿勢が乱れ、エンジン停止命令。海上に落下した。高度は11.5kmに留まる。
エンジン停止命令は30秒過ぎで出すべきだし、命令が実行されたかは疑問。品質が未だに低いと思います。
MOMO7号機
2020/7/19:エンジンが点火せず、打ち上げ中止。
2020/7/26:再び点火できず、打ち上げ中止。打ち上げは数か月後に
2021/7/5:全面的に改良され、打ち上げ成功。高度は約99km
MOMO6号機
2020/7/31:高度92km(暫定)に到達して成功。ペイロードの荷物の射出にも成功した。
ZERO
ZEROは、2023年に打ち上げを予定している、人工衛星の打ち上げ能力を持ったロケットです。世界の小型衛星需要は増しており、低価格で打ち上げができるZEROは衛星ビジネスにおいて大きく期待されています。ロケットの能力は、100kgの衛星を500kmの高度に打ち上げることができます。
ZEROは、小型ロケットとは言えMOMOよりもずっと大きいため、自前の技術だけでなくJAXAなど外部の協力も得た開発になるとのことです。小型ロケット事業のライバルは多いので、開発スピードが要求されます。ぜひ、ZEROを予定どおりの2023年に打ち上げてもらいたいです。※
インターステラテクノロジズのロケット事業を紹介する動画がアップされました。分かりやすくておすすめです。
出典:youtube
※2024年度以降の打ち上げとなっていますが、遅れそうな感じです。
4.PDエアロスペースも参入
2020年に入り、名古屋市にあるベンチャー企業「PDエアロスペース」も、大樹町多目的航空公園で無人宇宙機の実験を行うことになりました。PDエアロスペースの作るロケットは宇宙往復機で、ジェットとロケットのハイブリッド宇宙往復機です。
形は超音速旅客機のような形です。無人の再利用型宇宙往復機という最先端の技術は期待が大きいです。最初は小型の実験機で高度10kmを目指すとのことです。ゆくゆくは、高度100kmまで到達して帰還する宇宙往復機になるとのことで楽しみです。
5.宇宙基地として羽ばたけるか
インターステラテクノロジズのロケット打ち上げが始まったことにより、大樹町多目的航空公園の活気が再び高まりました。特に、大樹町民一体となったロケット打ち上げ事業は、大樹町の今後の起爆剤として大きく期待されています。
個人的にも、うまく行って欲しいです。それは、かつて北海道には格安ロケット打ち上げ事業としてカムイロケットがあって、とん挫した形で終わっていたからです。もちろん、カムイロケットの技術が今のインターステラテクノロジズへ反映されているようですが、今回も諦めてしまう展開だけにはなって欲しくないと思います。
今後の打ち上げに期待です。