「十勝の川の生き物たち」を読んで ~ 魚類の考察

2024年9月19日

出典:帯広市図書館 在架より

北海道開発局の帯広開発建設部が発行している本「十勝の川の生き物たち」という本が興味深いです。私は図書館で読みましたが、Web版が公開されていました。

発行年は2005年で、思ったよりも新しいものでした。そして、最初に魚類の項目があるのですが、本に記載されている実際にいた魚の場所と私の経験が結構違っていることに気付きました。これは、私や世間一般には知られていない魚の分布があるということと、この投稿までの20年で生物環境が変わってしまったということがあるのでしょう。

そこで、各魚種について、気付いたことを述べたいと思います。

オショロコマ

私の一番好きなオショロコマですが、本では十勝川本流と支流の札内川で確認されたとあります。

十勝川

まずは十勝川ですが、十勝ダム周辺とあるのですが、周辺の十勝川と支流において、オショロコマはとても少ないと思います。これら支流では、ニジマスが最上流部にまで進出してしまった川が目立ちます。昔は良く行った場所なのですが。

次に上岩松ダムですが、オショロコマがいても不思議はありませんが、釣れた例を見たことがありません。流れ込んでいるニペソツ川も、ずっと上流に行かないといないようです。

最後にヌプントムラウシ川ですが、これは異論はないです。ヌプントムラウシ川に限らず、十勝川最上流部は、今もオショロコマがいます。しかしながら、ニジマスも生息範囲を広げており、油断ならない場所でしょう。

札内川

札内川は、昔、オショロコマの楽園でした。しかしながら、支流の戸蔦別川とともにニジマスの名釣り場となり、オショロコマは最上流部へ押しやられました。

本では、大正橋で確認されたとあります。こんな中流域でオショロコマが確認されていたのですね。今は、札内ダムより下流では、ほぼオショロコマの姿はないようです。その札内ダムの上にもニジマスは生息していて、砂防ダムにより最上流部へのニジマス進出は免れているようですが、危ない状況です。

また、登山者がオショロコマを夕ご飯にする例が見受けられますが、できるだけ止めて欲しいですね。私も登山をしていましたが、オショロコマはそっとして欲しいです。

戸蔦別川は、昔とそう変わっていないでしょうか。2016年台風後の状況が良く分かりません。

本以外では

本には載っていない川で言うと、利別川本流でほぼオショロコマがいなくなってしまったようです。支流では右岸に流れ込むいくつかの川にオショロコマが残っていますが、ニジマスの生息範囲が広がっています。

また、然別川と音更川も、ニジマスの進出が著しい川です。例えば十勝三股周辺では、こんなところにニジマスといった川も目立ちます。山の反対側の石狩川流域でオショロコマが比較的守られているのとは対照的です。

日高山系は、もう生息範囲がかなり狭まっているので、そっとしておきたいですね。

アメマス(エゾイワナ)

アメマスに関して、本では十勝川の千代田堰堤より下流と十勝ダムの2つで確認されたとあります。

千代田堰堤より下流域

千代田堰堤より下流にいるアメマスは、サケと同じく海との往来をしています。一時期はとても釣れていましたが、近年はあまり釣れなくなったようです。理由は良く分かっていません。

十勝ダム

十勝ダム周辺にアメマスが多くいたのは事実です。私も1980年頃(古っ)にパンケニコロ川やポンニコロ川でアメマスを釣ったことがあります。釣りの本では、岩松ダムから上岩松ダムまでがアメマス釣り場と良く紹介されていました。

しかしながら、今はそのような話をあまり聞きません。アメマスが今でも良く釣れる川は、S川くらいです。これは、オショロコマの項と同じく、ニジマスによる駆逐があったのではと思います。環境破壊が大きかった部分もありそうですが。

本以外では

アメマスというか、陸封されたエゾイワナが、札内川から北側の日高山脈を源とする川にいました。昔は、札内川と戸蔦別川の合流点でアメマスが釣れると釣り情報にありました。私は釣れたことがありませんでしたが。

そして、M川やB川でもエゾイワナが釣れました。しかしながら、今は確認することができません。理由は今一つ分かりません。

音更川水系はエゾイワナの情報がとても少ない場所だったのですが、近年の気候変動のせいなのか糠平湖で大繁殖しています。日高系のB川でも、いつかそういうことが起こるかなあと思っています。

利別川水系ですが、昔は高島にあった堰堤付近でアメマスが良く釣れました。しかしながら、近年は利別川水系でアメマスという話をあまり聞きません。B川はいるようですが、自分の経験ですが、O川にアメマス(エゾイワナ)がいます。畑の中を流れる穏やかなO川にどうしてって感じですが、確かに釣れるのです。周辺の川にも、いるのかもしれません。

広尾方面の川には、アメマスが健在です。その代わり、オショロコマをほとんど見ることができません。日高山脈南部のオショロコマは、アメマスにすっかり排除されてしまいました。生き残っているのはR川上流部くらいでしょうか。

イトウ

イトウは、十勝川水系ではめっきり見られなくなりました。十勝川水系の中流部は河川改修が著しく、今でもイトウがいることの方が不思議なくらいです。本では、十勝川と利別川で確認されたとあります。

十勝川

イトウは帯広市周辺と岩松ダムで確認したとあります。

帯広市周辺の十勝川では、今でもイトウの姿を見ることができます。しかしながら、保護活動によって存続しているような状況で、自然産卵の例はとても少ないようです。いつまでも、生き長らえて欲しいですね。

岩松ダムでは、昔、良く釣れた情報がありました。しかしながら、近年、イトウが釣れたという話は聞きません。周辺には、もうほとんどいないのではないでしょうか。

利別川

利別川では、高島橋下流と記載されています。これは、私には初耳でした。利別川と言えば、足寄から陸別の間で良くイトウが確認されていました。しかしながら、その頃既に子供のイトウが確認されないと報告されており、今ではほぼイトウが釣れたという話を聞くことがありません。

海との往来があるイトウが、ひっそりといて欲しいですね。

ウナギ

なんと、十勝川下流でウナギが確認されたそうです。平成14年6月のことだそうです。

昔、豊頃にある沼で釣れたなんて話がありましたが、天然だったのか良く分かりません。まあ、いたとしても少ないでしょうから、そっとしてあげましょう。

十勝川の自然を守ろう

十勝川は、上流部の富村ダムから河口にかけて、河川改修が多く行われてきました。大昔から変わらずの原始の姿を保っているのは、シイ十勝川の最上流に架かる橋より上流部と、トムラウシ川のヌプントムラウシ川合流点より上流部くらいです。

治水との関係でまったく河川改修が必要ないとは思いませんが、不必要と思われる砂防ダムは、もう作らなくても良いのではないでしょうか。皮肉にも、少子高齢化で衰退が著しい日本の状況が、自然保護に繋がっています。

自然があれば他には何もいらないと考える人は少ないと思いますが、もう少し自然について考えてみることも必要でしょう。

最後に、今回の記事は私の個人的感想が多く、実際と違っている可能性があります。あくまでも一個人の感想として受け止めてください。