十勝幌尻岳 ~ ピリカノカに選ばれた眺めても登っても素晴らしい山
十勝平野から日高山脈を眺めると、一際高くて大きい山があります。それが十勝幌尻岳[とかちぽろしりだけ](1,846m)です。十勝幌尻岳は、1,900mを超える日高山脈の山々よりは低いですが、十勝平野にせり出して1,800m以上あるので、どの山よりも大きくて高く見えます。
私が子供の頃は、日高山脈の最高峰、日高幌尻岳(2,052m)だと思っていました。それでは、十勝幌尻岳について紹介します。
1.十勝幌尻岳のある場所
十勝幌尻岳のある場所は、帯広市の岩内仙峡西部、日高主稜線にあるエサオマントッタベツ岳(1,902m)から延びる支稜線上にあります。ここの支稜線は、途中に札内岳(1,896m)もあり、主稜線と変わらない高度があります。そして、十勝幌尻岳は、十勝平野に突き出た形なので、大きく、高く見えるわけです。
十勝幌尻岳は、主稜線から離れているおかげで、日高山脈主稜線にある山々の恰好の展望台になっています。
2.名勝ピリカノカに選ばれている
十勝幌尻岳は、ピリカノカの一つとして選ばれています。ピリカノカはアイヌ語で「美しい」「形」を意味しており、古くから景勝地とされていた場所が国指定文化財として登録されています。
古くからランドマークとしての大きな存在だった十勝幌尻岳は、ピリカノカとして十分な資格があると言って良いでしょう。
3.十勝幌尻岳に登るには
十勝幌尻岳には、帯広市唯一の一般登山道が付けられています。
戸蔦別川沿いの林道を進み、オピリネップ川が合流する地点から、川沿いの林道を進みます。すると、ほどなく十勝幌尻岳登山口に到着します。ここで記帳ボックスがあるので、必要事項を書いてから出発します。
登山道はオピリネップ川沿いを進みますが、2016年台風の前は、木々に覆われた渓谷沿いを進む登山道でした。ところが台風の後は、土石流に覆われた、開けた川沿いの道になってしまいました。元に戻るまでは時間がかかりそうです。
川の水流が少なくなると、顕著なゴーロ帯(大きな石が積み重なった場所)があります。これは台風の前から存在していて、火山地帯でもないのにゴーロ帯があるのが不思議でした。昔はゴーロ帯を通らずに尾根へ向かいましたが、台風でゴーロ帯が広がって登山道も中を進むようになり、しばらくは歩きにくい道を進みます。
いよいよ尾根への道ですが、最初はつづら折りですが、ほどなく苦しい直登になります。日高山脈の山以外でこれほどの急な登山道は少ないです。ペース配分を考えて登りましょう。
稜線に着いたところで休憩しましょう。山頂はもう近くです。しかし、まだ森林限界になっておらず、見晴らしが良くありません。しばらく進んだところで森林限界を迎えますが、景色を眺めるのは山頂までとっておきましょう。
ついに山頂に到着。この山岳景観の素晴らしさは、北海道有数だと思います。それは、次の項で紹介します。
登山データ
登山時間:登り3時間30分
標高差:1,230m
4.山頂からの絶景
山頂からの景色は、とにかく素晴らしいです。
西側に、大きく札内岳が聳えています。正面にあたる東面は、顕著ではありませんがカール状の地形で、札内岳東カールと呼ばれています。
札内岳のさらに西側に、主稜線上にあるエサオマントッタベツ岳があります。こちらも2つの大きなカールがあります。
右に目を向けると、日高山脈の主峰、日高幌尻岳が見えます。日高幌尻岳は主稜線から外れていますが、日高山脈のどの山よりも大きいです。まさに幌尻(アイヌ語で「大きい」)の名が相応しい、日本百名山の山です。
日高幌尻岳には3つのカールがあり、写真の南面が東カールです。そして良く見えませんが、戸蔦別岳(1,959m)との間の南面が、七つ沼カールです。どちらのカールも、日高山脈では抜きん出た大きさを誇ります。
札内岳から左に目を移すと、十ノ沢カールが正面を向けて鎮座しています。十勝幌尻岳からは一番迫力のあるカールです。カール壁とカール底がはっきりした立派なカールで、見ていて飽きません。
さらに目を左側へ向けると、日高山脈第二の高峰、カムイエクウチカウシ山(1,979m)が見えます。日高山脈では一番急峻な山で、それは氷河に削られたためです。八ノ沢カールが有名ですが、反対側にコイボクカールがあります。
180度向きを変えて、東側を見ると十勝平野が俯瞰できます。十勝平野の展望台はいくつかありますが、十勝幌尻岳が眺めとしては一番でしょう。
他の景色も紹介したいですが、それは皆さんが実際に登って楽しんでください。なお、十勝幌尻岳登山の登山レベルは中級者以上というところでしょうか。中級者以上でも整備されていない山は初めてという人は、十分な注意が必要です。
5.スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールド
遠くから来る場合、十勝幌尻岳に近いスノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールドで泊まると良いでしょう。アウトドアブランド、スノーピークが運営する快適なキャンプ場です。
6.眺めて登って楽しもう!
十勝幌尻岳は、子供の頃から眺めて過ごした思い入れのある山です。子供の頃は、いつかあの山頂に立ってみたいと思っていました。実際に山頂を踏んだのは、日高幌尻岳や北岳、穂高岳などよりも後になってしまいましたが、その感動は登山した山の中でもトップクラスです。
そんな十勝幌尻岳ですが、知名度はそれほどでもありません。しかしながら、日高山脈が国立公園になることで、注目を浴びることとなりそうです。何しろ目立ちますから。観光地化されるのは嫌ですが、その素晴らしさを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思います。