北大雪 ~ ニセイカウシュッペ山・平山・武利岳
大雪山国立公園には、旭岳や黒岳、層雲峡温泉などを有する表大雪と、富良野に裾を伸ばす十勝岳連峰、ぬかびら源泉峡などがある東大雪がありますが、もう一つ北大雪があります。しかし、北大雪という言葉は登山者くらいにしか浸透しておらず、観光にもあまり利用されていませんが、そのおかげで自然が良く残っています。
そんな北大雪について、ご紹介しましょう。
1.北大雪の位置
北大雪は、文字通り表大雪の北側にあり、ニセイカウシュッペ山を中心とした山域です。この山域は古い火山で構成されていて、表大雪のような活火山はありません。そのため、浸食が進んで鋭い山容を見せる山もあります。
そして、大雪山国立公園に含まれていると言っても、上川町内分だけが大雪山国立公園内であり、主なアクセスになる遠軽町側は国立公園外という不遇な状態になっています。例えば、ニセイカウシュッペ山はかろうじて大雪山国立公園内ですが、以前紹介した浮島峠は範囲外です。そのせいか、遠軽町側が荒れている印象があります。
また、地図を見るとアクセスしやすそうですが、高規格道や国道を使うことで近くまで来れるのですが、その先の林道レベルになると少し大変です。本来は層雲峡側からアクセスできれば近くて良いのですが、実際には北側の北見峠側からになります。
それでは、詳しく説明します。
2.一般的な観光地は少ない
北大雪は、一般的な観光地としての利用が少ないです。旭川紋別自動車道に奥白滝インターチェンジがあるのでアクセスは良くなったのですが、北大雪スキー場が限定的なスキー場として使われているだけなことと、白滝高原キャンプ場があるくらいしか観光施設がありません。足を伸ばして丸瀬布まで行けば観光地があるのですが。
そのため、登山をしないと北大雪の素晴らしさを体感できません。しかし表大雪のような観光施設が出来なかったために、北大雪の素晴らしい自然が残ったとも言えるでしょう。
3.ニセイカウシュッペ山
ニセイカウシュッペ山は、北大雪の最高峰(1,883m)です。地図で見ると層雲峡から近く、実際、登山道は層雲峡側に付けられていました(双雲別川沿いだったはず)。しかし、その登山道は渡渉をしながらの少し困難な登山道で、尾根に出ると立派な林道に出るため、忍耐の道でしかありませんでした。
その途中で出会う林道が古川砂金越林道で、近年になって開放されたことにより登山者はほぼこちらを利用するようになりました。古川砂金越林道を使えば、標高1,100mまで登ることができます。しかし上部は傾斜が急な悪路であるため、悪路に弱い車は無理をしない方が良いでしょう。登山口に大きな駐車スペースがあります。
※令和6年度も、古川砂金越林道に接続する上川町の町道が通行止めのため、ニセイカウシュッペ山登山口へは行けないようです。
登山道の途中で大槍があります。こんなところ登れないと思ってしまいますが、斜面をトラバースするので問題ありません。岩峰は層雲峡方面へ続いてますが、昔は層雲峡からのコースもありました。その層雲峡コースは、朝陽山までなら今も登山道がありますが、その先は廃道となっています。
ニセイカウシュッペ山は、実にたくさんの高山植物が咲きます。色もとりどりで、これだけ登山路脇で高山植物を楽しめる山も少ないでしょう。特にツクモグサが咲くことに注目ですが、まだ残雪の多い時期に咲くので、大槍付近のトラバースの滑落だけは十分に注意してください。
4.平山
平山(1,771m)は、名前のとおり山頂が何処か分からないほど平らな山です。その山頂らしさがないために、北側にある比麻良山(1796m、名称の由来はどうなの?)まで歩く人が多いです。また、比麻奈山(1,811m)が最高点であります。
平山も花の山です。稜線に出るまでの沢沿いに咲く高山植物が素晴らしく、稜線に出るとコマクサがいっぱい咲いています。そして最大の見どころはタカネシオガマの群落で、恐らく日本有数の規模でしょう。
また、平山登山道沿いには立派な滝が多く、一般登山道にこれだけ滝があるのも珍しいでしょう。
比麻良山より北側の稜線にも登山道は続いて、北大雪スキー場まで延びています。縦走登山をすると楽しいでしょう。
5.武利岳
武利(むりい)岳(1,876m)は、石北峠の北側に聳える、ニセイカウシュッペ山と共に北大雪を代表とする山です。その山容は鋭く、アクセスの悪いことと登山道の整備が良くない部分もあることから、登りづらい山と言えます。
登山道は丸瀬布からのコースが使われていましたが、登山口までの林道が大規模に破壊されて通れません(投稿時点)。そのため、石北峠側の武華山から登るようになっています。しかし、武華山から武利岳への道は険しくて整備が良くないので、ベテラン以外はおすすめできません。体力も必要です。
武華山までは、ごく普通の登山道です。しかし、その先は高度を一気に下げますし、滑落が心配な部分があります。また、再び武華山に戻る体力が必要です。そのため、十分に下調べをして自分の実力を考えて登山してください。武利岳山頂付近は、ちょっとしたアルプス気分を味わえるでしょう。
6.北大雪にも行ってみよう!
北大雪の山から大雪山を見ると、大きな裾野を持つ山が山頂部で一定の高さになり、黒岳や北鎮岳などの山頂部が連なっているように見えます。それは天空の楽園であるかのようであり、実際に素晴らしい場所です。そんな眺めが見れるのも北大雪の楽しみです。
北大雪を登った時に思ったのが、アプローチの大変さです。登山口までは、日高の林道並みに悪路で奥深いものでした。これは、国立公園外であることも影響しているようです。今のようなナビがなかった時は迷いやすかったことでしょう。そして今も、支湧別岳などの山へ登るのは大変なようです。
しかし、山頂部は花の楽園でした。ニセイカウシュッペ山や平山周辺にこれだけ多くの高山植物が咲いているのは意外でした。高山植物が好きな人には、十分おすすめできます。また、ナキウサギも多くいて、平山がおすすめです。ぜひ北大雪へ行って、高山植物とナキウサギを楽しんでください。