日高幌尻岳 ~ 日高山脈の最高峰

2023年6月2日

日高幌尻岳1
北戸蔦別岳方面から幌尻岳

日高幌尻岳(2,052m)は、日高山脈で唯一、標高2,000mを越える最高峰です。その姿を遠くから眺めると、他の日高山脈の峰よりも大きさが抜きん出ていて、盟主に恥じない貫禄のある姿をしています。また、3つのカールを抱いており、高山植物も豊富です。このように、魅力で溢れる山であることから、日本百名山にも選ばれています。

そんな日高幌尻岳ですが、日本百名山の中でも登るのが大変な山であります。同じく登山が困難な剣岳(2,998m)のような険しさはないのですが、人里離れた奥深さが登山を困難にしています。特に、メインルートの額平川コースではシャトルバスの利用が義務化されたため、登山の制約が増えてしまいました。

さらに、額平川渡渉が、渡渉経験のない登山者を苦しめます。通常の水量であればそれほど問題ありませんが、増水すると一気に危険になり、実際に死亡事故も発生しています。シャトルバスの発着点となる「とよぬか山荘」で十分に状況を確認してください。

最近は、シャトルバスを避けて北戸蔦別岳経由または新冠川から幌尻岳を登る人が増えてきていますが、上級者向けです。そのため、今回は額平川コースをご紹介します。

※写真画像が不足していますが、後日、追加する予定です。日高幌尻岳のフィルムだけが、どうしても見つかりません

1.とよぬか山荘まで

日高幌尻岳2
地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

昔は車で奥幌尻橋まで行くことができましたが、今はシャトルバスを使って奥幌尻橋よりも4kmほど手前の地点までしか行けません。確かに、シャトルバス終点から奥幌尻橋までの林道は断崖絶壁で、対向車が来ないようにと祈りながら進むようなところでした。ガードレールもなかったし、怖かったです。

そのシャトルバスですが、とよぬか山荘から発車する予約制になっています。以下の平取町公式サイトで確認してください。また、幌尻山荘予約制です。

とよぬか山荘へ行くには、国道237号の入口から道道638号を進みます。ルートは、沙流川から額平川へ山を越えて移動する形になります。国道の入口さえ間違わなければ、問題なく行けるでしょう。

2.シャトルバス終点から取水ダムまで

シャトルバス終点からは、林道歩きです。最初に額平川を渡る奥幌尻橋が、昔の登山口でした。そこから先は細い林道で、電力会社の車以外は立ち入り禁止です。ここを車で運転する気はとても起きません。

単調な林道歩きは苦痛です。先を急ぎたくなりますが、2時間以上歩く長丁場ですから、ペースを守りながら歩きましょう。

そして、ようやく取水ダムに到着します。ここから先は渡渉になりますから、沢靴に変更しましょう。

登山データ

歩行時間:2時間30分

3.幌尻山荘まで

日高幌尻岳3
出典:Wikimedia Commons 幌尻山荘

取水ダムから先は、額平川を渡渉して進みます。通常の水量であれば、それほど困難な渡渉ではありません。しかし、額平川は雨ですぐに増水します。無理に川を渡って流される水難事故が後を絶ちませんから、天気の悪い時辞めた方が無難です。

また、取水ダム付近では、へつりをする部分がいまだあるようです。今は危険個所に鎖が付いているようですが、私が登った時は鎖もなくて怖かったです。その時は重い三脚まで持っていったので、へつりで滑落しないように気を遣いました。

恐らく、幌尻岳登山で初めて渡渉を経験する登山者は多いと思います。心配であれば、ガイドが付くツアーを利用すると良いでしょう。

登山データ

歩行時間:2時間20分

4.幌尻岳山頂まで

幌尻山荘裏から登山道が伸びています。しばらくは通常の登山道といった感じです。途中にトッタの泉という水場がありますが、あまり出ていない時がありますから期待しない方が良いでしょう。

やがて、北カールの淵に飛び出ます。ここからは最高級の天上散歩です。高山植物がいっぱいで、ナキウサギの声もこだまします。しかしながら、南側に幌尻岳山頂が見えるのですが、なかなか近づきません。ここは周りを楽しみながら、ゆっくり進みましょう。

北カールが眼下に見えますが、ここに氷河があった時代は素晴らしい光景だったに違いありません。

日高幌尻岳4
出典:Wikimedia Commons 幌尻岳山頂付近から北カール

新冠川からの登山道と合流すれば、幌尻岳山頂はもうすぐです。北海道非火山唯一2,000m峰幌尻岳の山頂に立つことは、感無量でしょう。

登山データ

登山時間:登り4時間
標高差:1,100m (幌尻山荘からです)

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5.山頂からの眺め

山頂からの眺めは、素晴らしいの一言です。幌尻岳が主稜線からはずれていることも、眺めの良さに貢献しています。

南方に、カムイエクウチカウシ山(1,979m)が一際鋭く聳えています。幌尻岳とは対照的な急峻な姿は、日高第二の高峰として恥じません。そして、高さこそ幌尻岳に譲りますが、さらに上登山レベルが必要な山です。そして右には、1,839峰(1,842m)も聳えています。日高山脈の山の厳しさは、他の北海道の山々の上を行きます。

日高幌尻岳5
出典:Wikimedia Commons イドンナップ岳を望む

イドンナップ岳も、登山コースがあるとは言え、困難な登山となる山です。日帰りが難しい山ですが、途中で野営するにしてもヒグマの恐怖と闘わなければなりません。日高山脈で登山ルートがある山を一通り登った後にチャレンジが許されるくらい、困難な山です。十分な登山スキルと計画が必要です。

日高幌尻岳6
出典:Wikimedia Commons 七ッ沼カール

憧れの七ッ沼カールを見るなら、戸蔦別岳側へ歩く必要があります。体力に余裕がある人は、戸蔦別岳に登って幌尻山荘へ戻ると良いでしょう。

6.日本周遊マップで地図表示

日高幌尻岳7
日高幌尻岳8

地図アプリ「日本周遊マップ」で幌尻岳登山道山小屋を確認できます。表示させるには、「設定」の中で「ハイキング ルート表示」と「山小屋表示」を有効にしてください。

日高幌尻岳9

こんな感じで簡易的に登山道を表示します。

7.いつまでも自然が保たれて欲しいです

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伏美岳より幌尻岳を望む

日高幌尻岳は、私にとって憧れの山でした。子供の頃は十勝幌尻岳日高幌尻岳と勘違いしていましたが、それが分かってからは、最終的な登山の目標となりました。実際に、日高幌尻岳を登ってから5年ほどは登山から遠ざかり、それから登山を再開しても中級登山程度しかしなくなりました。日高幌尻岳は、私にとっての最終目標だったのです。

私が日高幌尻岳に登ってから随分と年月が経ちましたが、日高幌尻岳の魅力は今も変わっていません。しかし、2024年度にも日高山脈国立公園に昇格することにより、大きな転換期を迎えようとしています。今後は、自然がさらに厳しく保全されるのか、観光化が進んで貴重な自然が失われるのか、これは分かりません。

日高山脈は、北海道の中では一番自然が残された地域だと思います。今までにも電力開発で自然破壊が進みましたが、観光地化しなかったことで特に日高地方側の原始性が保たれました。これからも、原始の自然が保たれることを期待します。