伏美岳 ~ 日高山脈カールの展望台
日高山脈には、およそ100個ほどのカール地形があります。ところが、ふもとからは遠くて良く見えません。そして、一般登山道のある日帰りできる山からも良く見えない場合が多いです。そのような中で伏美岳(ふしみだけ)からは、カールが肉眼でもはっきり確認できます。
また伏美岳(1,792m)は、登山道の高低差が1,000mあることと、急登であることから、登山レベルを測るのに適した山だと思います。もし伏美岳を登ることができれば、北海道にある主な一般登山道は登ることができますし、春に登ることで登山ができる体になったことを測ることもできます。
それでは、伏美岳について詳しく解説していきましょう。
1.伏美岳へのアプローチ
伏美岳登山口を目指すには、まずは上美生の町へ行きます。そして、大樹町へ向かう道を進んで、美生川を渡ったら美生ダムへ向かう道に入ります。この道をまっすぐ進み続けます。
やがて山が迫ってくるようになり、美生川の荒々しい流れの淵を道が進むようになると、美生ダムへ向かう道と伏美岳登山口へ向かう道の分岐になります。ここからニタナイ川沿いの林道を進むことになりますが、周辺の林道と同じく2016年台風で林道が破壊されてしまい、令和6年度時点でも不通のままです。
ニタナイ川沿いの林道は、日高山脈特有の路肩が弱い特徴があります(ここは断崖絶壁でないだけ救われますが)。台風被害の起こる前でも、良く路肩が崩れていました。しばらくは開通することがないと思われますので、歩かなければなりません。距離にして7kmほどあるので、ベテランでないと現時点では登山が厳しいです。
6kmほど歩いた地点に、美生岳避難小屋があります。(次項で説明)
美生岳避難小屋から300mほどで、登山口にある大きな駐車場に着きます。私が良く行った1990年代頃は駐車場がなくて、車を停めるのに難儀したものです。また、トイレはありませんから、美生岳避難小屋のトイレを利用してください。
伏美岳避難小屋
伏美岳避難小屋は、三角屋根で2階建ての山小屋です。遠くから伏美岳に登りに来る登山者の宿泊用として最適です。
山小屋には30人ほどが泊まれます。また、離れになりますが、トイレもあります。私は一度利用しようかなと思った時がありましたが、中の湿気に満ちた独特の香りで辞めた経験があります。多分タイミングだと思いますし、今は違っているかもしれません。
2.登山口から標高1,150mまで
「登山ルートは、登った時のGPSログを元に作成しました」
登山口から先は、昔の木材伐採道?を進みます。そして、左へ大きく曲がってしばらく進んだ先から急登が始まります。
伏美岳登山道も、なかなかの急登です。1年の初めての登山に伏美岳を選んだ時は、足が棒になりました。ペースを守って地道に登りましょう。
1,150m付近で、いきなり平坦(に見える)な登山道になります。ここで大休止しましょう。ここまで来ても、先はまだまだあります。山頂までの急斜面が見えて、そこを登ることになるので気が滅入ります。あまり休み過ぎると本当に登れなくなってしまうので、登山を再開しましょう。
3.山頂まで
登山道の平坦な部分はしばらく続きますが、再び山頂までの急登になります。北方にあるトムラウシ山(1,476m 大雪のトムラウシではなくて、対岸にある山)が、高度の目安になります。トムラウシ山と同じ高さになり、ついには越えた高さになれば、山頂も近いです。隣の妙敷山(1,731m)も、高さの目安に適しています。
ようやく森林限界を抜けると、高山植物の咲く斜面です。特筆する高山植物はありませんが、伏美岳唯一のお花畑です。
そして、最後のひと踏ん張りを登ると、細長いハイマツに囲まれた稜線状になり、伏美岳に到着します。
さらに、ピパイロ岳(1,916m)方面へ歩くと、すこし窪地があり、テント場として利用する人もいます。そして西端に着くと、日高山脈の主稜線を邪魔することなく眺められます。
初めて登った時は、その雄大さに驚いたものです。既に登っていた南、北アルプスほどの山の大きさはありませんが、原始から続く、ありのままの自然に感動しました。カール地形も、日高山脈のカールは保存状態がとても良いです。真正面に見えるトッタベツカールには、登山道がありません。
そして、主稜線の奥に聳える日高幌尻岳(2,052m)の雄大さが素晴らしいです。それまで日高幌尻岳はちょっとしか見えなかったり、遠くにしか見えていなかったのですが、伏美岳に登って初めてその大きさを実感しました。
山頂でお昼ご飯を取る人が多いと思いますが、眺めに夢中になり、食べる時間がなくなってしまうでしょう。
それでは、簡単に眺望をご紹介します。
登山データ
登山時間:登り3時間30分
標高差: 1,065m
4.いよいよ日高主稜線が待っています
伏美岳は支稜線のピークに過ぎず、本峰はピパイロ岳です。しかし、伏美岳からピパイロ岳へは3時間もかかります。そのため、林道が通れない今では、どんな人でも途中で一泊する必要があります。日高山脈の山は、他の山とは違います。
そして、ピパイロ岳の先には、日高第3位の高峰、1967峰があります。ほんと、日高の山は遠いです。私はピパイロ岳すら登らずに終わりました。みなさんは、十分な技術と装備の上、チャレンジしてください。
5.番外編:旧伏美仙峡 (昔すぎて写真がありません)
美生ダムの下流に、伏美仙峡という観光地がありました。少し深い渓谷に砂防ダムが作られて、伏美湖という潅水部ができました。その湖畔にはキャンプできる広場があり、駐車する場所には管理小屋があって、管理人も常駐していました。その管理小屋の内部には、付近で釣れた魚拓がいっぱい貼ってありました。
また、砂防ダムの下の渓谷に降りる道がありました。伏美仙峡は、帯広市の岩内仙峡と同じく、観光客がやってくる場所だったのです。しかし、私が学生の頃で既に伏美湖は土砂に埋まった状態でしたし、その後、老朽化が進んだことで、付近は閉鎖されました。私は一度ここでキャンプしました。釣りをしたり、管理人の方に特別にボートを借りて伏美湖を進みました。今じゃ絶対許されないことでしょうね。
この伏美湖は、単なる砂防ダムではなくて、水力発電所の取水にも使われていました。今も地図に載っているので、水路は生きているようです。下流に小さな発電所がありましたが、それも今はありません。
懐かしい思い出です。