千代田堰堤 ~ 十勝川の生態系に大きく影響しました
千代田堰堤は、十勝川温泉の少し東にある十勝川の堰堤です。千代田堰堤付近の十勝川は、既に佐幌川や然別川、音更川、札内川などの支流の水を集めて水量が多く、千代田堰堤で迫力の落ち込みを見せています。でも、どうしてこの場所に堰堤があるのでしょうか。簡単にご紹介します。
1.千代田堰堤ができたわけ
「JSMAP2地図」地図アプリ「さっぽろ周辺マップ ライト3」で利用できます。
千代田堰堤は、昭和10年に水田の灌漑用として造られました。今の十勝では水田がほとんどなくなりましたが(一部、酒米を中心に復活)、当時は稲作も行われていました。そして、十勝川を堰き止めたことで、秋にサケが大量に集まりました。そのため、採卵用のサケを取る場所として重要になりました。
また、サケ漁が行われることで、観光客が集まるようになりました。一時は温泉ホテルも出来たのですが、今は更地となっています。
2.海から遡上する魚が上れなかった
千代田堰堤を流れ下る十勝川の水流は強く、魚道が併設されても堰堤を越えられる魚は非常に限られました。そのため、千代田堰堤の上流にサクラマスやアメマスの遡上がなくなり、千代田堰堤の上にある十勝川水系ではヤマメが釣れなくなってしまいました。
また、イトウも千代田堰堤が出来た影響を大きく受けたようです。千代田堰堤下流でイトウが釣れたという話がまったくなくなりました。十勝川水系のイトウは風前の灯になっています。
しかし近年、魚道の改修と、記録的な大雨時に堰の高低差がなくなることなどから、千代田堰堤をサクラマスをはじめとするサケ科の魚が遡上するようになりました。おかげで、釣りをしていてもヤマメが釣れることが多くなってきたのです。年によって遡上の数は大きく変わるようですが、再び十勝川の生態系が復元されてきています。
3.千代田新水路の登場
千代田堰堤付近の十勝川は幅が狭く、千代田堰堤があることで洪水の心配がありました。そこで、2007年に千代田堰堤の南側に十勝川の分水路が造られました。それが千代田新水路です。
千代田新水路は、普段は水路の入り口のゲートを閉めています。そして洪水時にはゲートを開けて、新水路側にも水を流すようにします。さらに、記録的な大水が来た時は、新水路と本流が繋がって1本の川となります。
4.ととろーど
千代田新水路が造られる際に、新水路の横に魚道が造られて、その側面をガラス張りにした「ととろーど」が造られました。ととろーどは地下に設置されていて、段差のある魚道を側面から見ることができます。ここでは、遡上中のサケやサクラマス、アメマス、ウグイなどを観察できます。
ととろーどは地下にある施設のため、記録的な洪水時は水面下になってしまいます。そのため、入り口は厚い扉になっています。恐らく完全密閉されるのでしょう。
魚道の先も見ることができます。しかし、たくさんのサケが上ってきていますが、魚道の先は柵で閉められています。ここに上がってきたサケくらい、上流に行かせてあげられないものでしょうか。可哀そうです。
(時期によっては、堰を開放しているかもしれないですね。それで、千代田堰堤の上にもサケ科の魚が増えてきたのかもしれません)
動画も作ってみました。よかったら見てください。
5.秋に訪れてみよう!
千代田堰堤に行くなら秋がおすすめです。それは遡上するサケを見られますし、十勝が丘の紅葉も美しく、過ごしやすいからです。また、付近は遊歩道が整備され、新水路の入り口や千代田堰堤の下流には橋があってハイキングにもってこいです。さらに自転車の貸し出しもありますから、ちょっとしたアウトドア気分で観光すると楽しいのではないでしょうか。