日高山脈でおすすめの場所は?

2024年、ついに日高山脈が国立公園となりましたが、とりわけ何かが変わったという感じではありません。そこで、個人的に日高山脈のここがおすすめという場所を取り上げてみます。

1.幌尻岳周辺

日高山脈の紹介では、ほぼ幌尻岳周辺の空撮映像が使われています。幌尻岳(2,052m)は日高山脈の主峰であり、周囲に3つの大きなカールがあります。そこには高山植物が咲き誇り、ヒグマやナキウサギの楽園となっています。

しかしながら、幌尻岳へ行くには登山をするしかありません。大雪山のように、ロープウェイや、銀泉台へ行く道路などはないのです。しかも、3つある登山道は、初心者や山深い場所での登山をしたことがない人には難しい道です。つまり、登山者でさえ簡単に行けない場所が、幌尻岳であるわけです。

出典:Wikimedia Commons

このように、一番の見どころが国立公園になったからと言って簡単に見れるわけではありません。それでも、登山道が今よりも整備されることにより、登りやすくなると思います。

行くのは大変だけど、山深さやカール周辺の景色を楽しんでもらいたいです。

2.カムイエクウチカウシ山周辺

出典:Wikimedia Commons

日高山脈の最深部にあるカムイエクウチカウシ山(1,979m)。主稜線から外れた幌尻岳を除くと、主稜線で最も高い山です。日高山脈は、カムイエクウチカウシ山を頂点に南北へ低くなります。

カムイエクウチカウシ山の周囲はカールだらけで、自らも「八ノ沢カール」と「コイボクカール」を持ちます。そして、二百名山に選ばれる山でありながら登山道がなく、登山の最上級者向けで二百名山最難関となっています。

当然、観光と言っても、その片鱗すら拝むことが困難です。私もカムイエクウチカウシ山は登りませんでした。途中の八ノ沢カールの手前は滝になっており、危険な登降を強いられます。そこでは良く滑落事故が起こっており、中途半端な登山技術で臨むことはできません。

このように、日高山脈の魅力を知ろうとしても、観光客には無縁と言っていい世界で難しいです。ここに、日高山脈を観光地化する安易な発想が打ち砕かれる本質があります。従来の観光は、日高山脈には通用しないのです。登ったこともない人が会議に参加するなんてナンセンスだと思います。

3.十勝幌尻岳

幌尻岳方面

日高山脈の魅力を最も易しく得られる場所が、十勝幌尻岳(1,846m)でしょう。以前にも記事で紹介していますが、山頂からの眺めが良いだけでなく、麓からも存在感が抜群な山です。そのため、ピリカノカの一つにも選ばれています。

十勝幌尻岳の山頂からは、日高幌尻岳からカムイエクウチカウシ山までの中枢部がとても良く見えます。主要なカールを一度に見ることができて、ちょっと遠いですけれど日高山脈の魅力を少しでも味わうことができるでしょう。

カムエク方面

しかしながら、十勝幌尻岳の登山自体も、それほど楽ではありません。特に沢から離れて稜線に出るまでの登山道はとても急で、3時間ほども続きます。見晴らしもあまりない単調な急登は、修行のようです。それでも、日高山脈にはさらに大変な急登があるわけですから、中級登山者レベルで登ることができる十勝幌尻岳は貴重でしょう。

十勝幌尻岳の魅力は、日高山脈だけではなく、十勝平野の大展望台でもあることです。十勝幌尻岳は十勝平野に突き出していて高度もあるため、十勝平野を広く見渡せます。これは、狩勝峠や日勝峠からの展望とは比較になりません。やっぱり高度が大事であり、羊蹄山もそれが当てはまります。

4.歴舟川

出典:Wikimedia Commons 歴舟川中流

日高山脈を流れる川は水が澄んでいてきれいです。その中でも歴舟川は、十勝側の川では特にきれいだと思います。それは、水質だけでなく、渓谷が美しいんです。

歴舟川の坂下というところに、坂下仙峡があります。とても大きな堰堤があって、その上流から深い渓谷になります。それは、上流にある日方大橋でピークを迎えます。しかしながら、2024年現在、日方大橋の前で林道が通行止めになっており、それより上流部へ行くことができなくなっています。

ただでさえ入渓地点が少ない坂下仙峡ですが、唯一誰でもアクセスできる日方大橋へ行けなくなってしまいました。恐らく日方大橋は再度通れるようになると思いますが、その奥へ行くことは恐らくできないでしょう。何とか日方大橋周辺だけでも観光できる形にならないものでしょうか。

日方大橋から先で林道は、歴舟川沿いとポンヤオロマップ川沿いに分かれます。その片方であるポンヤオロマップ川は、自分が今まで目にした川の中で一番美しいです。林道はしばらく川よりもずっと高い場所を進むのですが、途中から川まで降りて何度か川を渡ります。そして、ポンヤオロマップ岳登山口あたりで終点を迎えます。

この周囲をヤマメ釣りで訪れていました。川まで降りるのが大変でしたが、すばらしい渓相で滝もあり、それだけで楽しめました。しかしながら、本格的に釣りをしようとした時から林道は不通になり、今も再度開通が見込まれません。日高山脈の名峰、ペテガリ岳への十勝側のルートでもあるのですが、もう廃道に近いです。(いや、ポンヤオロマップ岳より先は、どちらにしろ廃道みたいなものでしたが)

ポテンシャルで言えば、山梨の西沢渓谷のような観光資源だと思いますが、国立公園になったからと言っても活用されることはないのでしょう。

5.楽古岳

出典:Wikipedia

どうして楽古岳?と考える人も多いでしょうが、観光客でも見ることができて山容が美しい山ということで選んでみました。日高山脈は三角錐の似たような形の山が多くて、判別が難しいです。そのため、単独で存在感がある山が少ないです。その中で楽古岳(1,471m)は、山容がとても良く整った貴重な山です。

楽古岳の山容を見ることができるのは、登山口にある楽古山荘へ行く途中の林道からです。林道を走ると突然にその山容が現れて、まるで単独峰のような神々しさです。これは、ぜひ観光客の人にも見てもらいたいです。

楽古岳は、平野部からも良く見えて特徴的です。それは、画家の坂本直行にも愛されました。高さこそ1,500mにも届きませんが、登っても眺めても良い名山だと思います。

6.アポイ岳

日高山脈で観光客が楽しめる場所と考えると、海岸部が主になります。それでも、少しでも日高山脈らしさで観光したいのであれば、アポイ岳がおすすめです。

アポイ岳は標高811mしかありませんが、地球の奥深い岩石である「かんらん岩」が直接地表に現れている特異な地形のため、めずらしい高山植物に富んでいます。それを見るには登山が必要ですが、日高山脈で一番整備された登山道が用意されており、登山装備を最低限整えれば登山未経験者でも十分登ることができます。

それでも登山は嫌だという人は、登山口にある「アポイ岳ジオパークセンター」でアポイ岳を知ることができます。日高山脈の神髄を知ることとは少し違いますが、アポイ岳だけでも十分楽しめるでしょう。

7.日高山脈を知ろう!

ここまで日高山脈を紹介してきましたが、さらにディープなエリアが日高山脈には存在しています。それは日高側の日高山脈中枢部であり、歩いて山越え谷越えが必要な場所です。静内川流域は林道が閉鎖されているため、到達できない場所が多くあります。仮にペテガリ岳に登るとしても、神威山荘まで車で行き、山を越えてペテガリ山荘へ歩く必要があります。昔は日帰りできたペテガリ岳ですが、今は2泊3日が現実的でしょう。

以上、日高山脈を観光地化するのは至難の業だと思います。昭和の時代ならともかく、令和の今は自然破壊が許されるわけもなく、お金もありません。そのため、国立公園になっても観光地化を推進するのではなく、自然保護に徹することが大事なことではないかと私は考えます。でも、最低限のアクセスだけは保持して欲しいです。(結局は、私も自己都合なのかもしれません)

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