千歳湖 ~ 身近で遠い水芭蕉の咲く楽園

2019年12月2日

千歳市にある湖といえば支笏湖が有名ですが、千歳湖という名前を聞いて知っている人は少ないでしょう。また、名前だけは知っているという人もいるかもしれません。しかし、千歳湖は、人の住む場所からそれほど離れていないにも関わらず、静かに存在しています。

1.千歳湖の概要

千歳湖

千歳湖は、美々川の最上流部にある沼です。近くには新千歳空港があり、公立千歳科学技術大学が、すぐ近くにあります。また、付近は千歳美々ワールドという工業団地として整備されていて、決して秘境にあるわけではないのですが、入り口が分かりずらく、谷を降りる必要もあることから、知名度が低いです。

千歳湖の生い立ちは、湧水が多い美々川の最上流部を堰き止めたことが始まりのようです。資料が少ないので確かなことが分かりませんが、昔は観光地として整備されて、ボートなども乗れたようです。しかし、今は千歳市の紹介もなく、ひっそりと佇んでいる状態です。

千歳湖には複数の沼が確認できますが、1番大きな沼は、写真のように少し大きいです。しかし、アウトレット(出口)部以外は立ち入ることができません。整備されているわけではないので、あぶない場所には立ち入らない方が良いでしょう。

千歳湖にはニジマスなどもいるようですが、釣りの対象にはなっていません。私が確認した魚は、ドジョウヤツメウナギでした。アウトレット部から流れる川に、これらの魚が泳いでいました。

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2.水芭蕉の大群生地

水芭蕉

千歳湖の名前を耳にすることがある理由は、千歳湖のアウトレット部から下流の美々川流域に水芭蕉がたくさん咲くからです。4月中旬に水芭蕉が大群落を作り、それを新聞社が春の風物詩として紹介することがあります。水芭蕉の群落は、石狩エリアでは有数の規模だと思います。

ただし、木道などが整備されていないので、群落の見れる範囲は千歳湖周辺だけになります。木道がないからと言って、むやみに湿地帯に入らないでください。

水芭蕉については、姉妹サイト「Wildflower北海道」でも紹介しています。よろしければどうぞ。

3.清流「美々川」

美々川

千歳湖から少し離れた下流の美々川に掛かる橋の写真ですが、いかに周辺の湧水が多いかが分かります。頭上を飛行機が飛び交う場所に、このような自然が残っていることは貴重です。

美々川サケが昇るだけでなく、エビなどの水産資源も豊富なようです。しかし、第二種漁業権が設定されており、規制外の釣りだとしても控えることが賢明だと思います。

4.荒らさず謙虚に千歳湖を楽しもう

美々川

千歳湖を紹介してきましたが、千歳市の紹介もなく、千歳湖への案内板もほとんど存在しないため、どう扱って良いか迷っていた経緯があります。これまでは、知る人ぞ知るという存在にとどめておく方が良いだろうと思っていました。しかし、IR(カジノを含む商業施設)を付近に作る議論があることから、周辺の自然を紹介するという意味を込めて紹介に至りました。

千歳湖マップ
地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

しかしながら、千歳湖周辺をむやみに荒らしてしまった場合、立ち入りが禁止になる可能性があります。そのため、千歳湖に行く場合は、謙虚に自然に影響を与えないように心掛けてください。春以外は人に会うことも少ないでしょう。ふと静かな場所に身を置きたい時に、行ってみてはいかがでしょうか。

追記:ラピダスの半導体工場ができます

2023年になり、千歳美々ワールド内に半導体メーカーのラピダス(Rapidus)が半導体工場の建設を開始します。まだはっきりとした位置と規模(範囲)は分からないのですが、最初は千歳湖北側南側で工事が始まり(2023年9月から本格着工)、2020年後半に量産化が始まり、いずれは千歳湖が取り込まれるような大きな工場になりそうです。

完成予想図を見ると、千歳湖が半導体工場に組み込まれているようにも見えます。確かに未来に繋がる希望となる工場だと思いますが、千歳湖はどうなってしまうのでしょう。今の自然、特に水芭蕉群落がどうなってしまうのかが不安です。

一つ言えることは、千歳湖が静かで落ち着いた場所ではなくなってしまうことですね。少なくとも千歳湖周辺の自然だけは守ってもらいたいですが、寂しいです。

ラピダス半導体工場建設予定地は、千歳湖の南側になることが分かりました。ひとまず、千歳湖は保全されるようで安心しました。今後を見守りたいと思います。