豊似湖 ~ 日高山脈唯一の自然湖
日高山脈は褶曲山脈で、しかも壮年期に当たるので、自然の湖(小規模な沼は除く)は一つしかありません。その唯一の湖が、豊似湖です。豊似湖は小さな湖ですが、とても個性的で魅力的です。
それでは、ご紹介します。
1.豊似湖の概要
豊似湖は、日高山脈の南端、猿留川上流にある自然湖です。どうして、こんなところにと思いますが、wikiによると
この湖はモレーンによってせき止められてできており、広義の氷河湖に該当する。
Wikipedia
とあります。日高山脈のカール地形はトヨニ岳(1,493m)が南限ですが、ずっと低い標高にある豊似湖は氷河期の影響で出来たのでしょうか。「広義の」という意味が良く分かりません。
猿留川流域は誰も人が住まない秘境なので、豊似湖に行けるようになったのは最近のことと思いがちです。しかし、江戸時代には付近に猿留山道が開かれており、豊似湖の存在は既に知られていました。
そして、一時期はワカサギ釣りやマス類の釣り場として利用されたようです。このように、豊似湖は意外と歴史を持った湖です。
近年は、おみやげの定番、白い恋人のロケ地として知られるようになりました。豊似湖を上空から見るとハート型をしていることから、人気が高まっています。
2.豊似湖にいる動植物
豊似湖には、ワカサギやニジマス、ブラウントラウトといったサケ科の魚が居ます。これらは本来いなかった魚で、移植されました。もともといた魚と言うとイトヨですが、ブラウントラウトが繁殖すると減ってしまいそうです。その他に、アメマスがいるとも言われますが、定かではありません。
また、湖畔にはニホンザリガニがいます。間違ってもウチダザリガニを移植しないで欲しいです。然別湖のような悲劇は起こらないで欲しいです。
豊似湖の周辺には、ナキウサギがいます。日高山脈南部は標高が低いですが、冷涼な岩場にナキウサギが生息しています。本来、然別湖周辺がナキウサギの生息下限と言われていますが(※)、日高山脈南部は、海に近い場所にさえ住んでいるようです。このような特異な自然のバランスが崩れないことを望みます。
※然別湖周辺は、永久凍土のある岩石帯が冷涼な状態のため、ナキウサギがいます。
3.猿留山道
広尾町からえりも町にかけては日高山脈が落ち込んでおり、断崖絶壁の海岸線に黄金道路が通っています。今でこそトンネルにより国道が通っていますが、昔は海岸線を通ることを諦めて山側をトラバースして進みました。それが、猿留山道です。
猿留山道が出来たのは1799年で、なんと江戸時代です。1934年に黄金道路ができると猿留山道の役割は終えましたが、今も再度整備されたため、歩くことができます。当時の面影が沼見峠を中心に残っているので、ハイキングをして楽しむと良いでしょう。
猿留山道については、えりも町の「郷土資料館「ほろいずみ」・水産の館」に詳しい情報があります。ぜひご覧になってください。
4.猿留川
猿留川は、多くの支流を有する、日高山脈南端にある川です。昔はヤマメ釣りで憧れの川でした。十勝にある川ではヤマメがとても少なくなった時期があり、少し足を延ばして猿留川に行こうと考えたものでした。
その猿留川ですが、当時の面影がないくらいヤマメの魚影が少なくなりました。むしろ、駄目だった十勝の河川の方が魚影が濃いくらいです。猿留川の資源回復が待たれます。
猿留川では、サケの捕獲と放流が行われています。サケに関しては、今も昔も大事な川であることに変わりありません。いつまでも母なる川であって欲しいです。
5.豊似湖へのアクセス
豊似湖へ行くには、目黒市街から猿留川左岸にある林道を上ります。昔はひたすら猿留川左岸の林道を進んだのですが、今は途中から林道えりも線に入り、猿留川を渡って右岸に入り、右岸沿いの林道を進みます。
ほどなく猿留山道入口がありますが、それを通り越して、合流する林道、庶野沼の沢線を進めば、豊似湖手前にある駐車場に着きます。そこに車を置いて200mほど進むと豊似湖に到着です。
6.国立公園になっても自然を保って欲しい
私が豊似湖周辺に釣りへ行っていた1980年頃は、釣り人くらいしか足を踏み入れない秘境でした。今も観光客は少ない状態ですが、日高山脈が国立公園になるとったため、増えることが予想されます。
そうなると、ナキウサギやニホンザリガニなどの貴重な動植物に影響する可能性があります。国立公園になった暁には、自然を守るルールの徹底をして欲しいです。
私は猿留川には何度か行っていますが、豊似湖と猿留山道には行っていません。いずれ行くつもりなので、その時にリライトします。